誠建設工業グループ
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2025-10-23
通勤電車の中が一変した。
ほんの一週間前までシャツ一枚だった人たちが、今日はみなコートやフリースを羽織っている。
車内の空気がひやりと冷たい。冬の気配が鼻の奥をつく。
家の布団も、もう夏用では頼りない。部屋着も厚手に替えた。
待ちに待った冬がやってきた。
――もっとも、夏のほうが好きだ。
だが眠りの深さを思えば、冬に軍配があがる。
開放の季節から静寂の季節へ。
心もまた、少し落ち着きを取り戻す。
毎年この頃になると、思い出す。
金のない年末だけは、迎えたくない。
若い頃の正月は、いつも財布が空っぽで、
「来年こそは」と、煙草の煙に願いを託した。
自己啓発の本を山ほど読んだ。
努力も、ほんの少しはしたつもりだ。
だが――あと一歩。
その「一歩」の執念が足りなかった。
こうしてまた一年が過ぎていく。
コートの襟を立て、息を白くして、
それでも人は、来年こそはと思うのだ。