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2026-04-08
大阪城の花見客でごった返す公園。
桜は満開、桃も咲き誇り、視界はまるで海外リゾートのようだ。
だが、その美しさの裏で——ひとりの男が過去を噛みしめていた。
「海外旅行気分やな…」
見上げるのは、天守閣ではない。
その向こうにそびえる、高層マンション群だ。
「田舎モンはな、ああいうビル見てまうんや…」
笑っている。だがその目は、どこか遠い。
——24年前。
市内のマンションは、まだ“手の届く夢”だった時代。
もし、あのとき無理してでも買っていたら——
「人生、変わってたんかな」
今や価格は高騰。
同じ部屋は、もはや“別の人生”の住人のものだ。
だが男は、意外にもこう続ける。
「まあな…今の人生も、悪ない」
含みのある一言。
強がりか、それとも本音か——
桜の花びらが一枚、肩に落ちる。
それを払うでもなく、男はもう一度ビルを見上げた。
手に入らなかった未来と、
選んできた現実のあいだで——
大阪の春は、やけに静かだった。
