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2026-02-14

🎬『終わりの始まり ― 65歳のポートフォリオ』

雨は降っていなかった。

だが、空気はどこか湿っていた。

食卓の向こうで、

投資に疎いはずの妻が言った。

「株って、やったほうがいいの?」

その瞬間、背筋に冷たいものが走る。

——靴磨きの少年。

1929年、株を勧めたあの逸話。

大衆が語り出したとき、相場は終盤にいる。

65歳。

時間は味方ではない。

20年あれば

**S&P 500**に一括。

それが王道だった。

だが、残された時間は10年。

「損しないことが一番だ」

増やすのは、その次だ。

3年分に分けて入れる。

保険をかける。

暴落は、いつだって突然やってくる。

日本株はどうだ?

首を簡単に切れない社会。

守られる雇用。

緩やかな衰退。

長期で“そこそこ”。

それは安心か、停滞か。

逆張りなら中国。

だが、胸の奥が拒む。

制度が読めない。

政治が市場を飲み込む。

結局、資金はまたアメリカへ向かう。

軍事力。

ドル基軸。

テクノロジー。

「核のない国の未来は不安定だ」

そう言い切る自分に、

少しだけ違和感が残る。

恐れているのは世界か。

それとも、自分の老いか。

75歳の自分はどうなっている?

市場が崩れた夜か。

それとも、穏やかな老後か。

チャートは誰にも読めない。

だが、時間だけは確実に減っていく。

テーブルの上の湯呑みから

湯気がゆっくり消えていく。

その速度が、

今の自分の持ち時間のように思えた。

妻がもう一度言う。

「で、どうするの?」

私は静かに答える。

「焦らない。守りながら、進む。」

相場はいつも、

欲望と恐怖のあいだで揺れている。

だが本当のサスペンスは——

未来ではなく、自分の判断にある。

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