株式会社誠コーポレーション

強烈なインフレに正面から殴りかかろうなどと考えるのは愚かである。相手は国家ぐるみで膨らませている怪物であり、庶民が刀を振り回したところで一太刀浴びせられるはずもない。ゆえに私の戦法はただ一つ──消費しない。

会社では広告費を削り、通勤は電車一本槍、備品など買わぬ。何も買わぬ。出血を止めるが如く、一滴の支出すら絞り出さぬ。

個人の暮らしにおいては、この冬、冷徹な規律を敷く。食料はサンデイ、業務スーパー、万代に限る。米はカルロース一択。ネット通販もカード払いも封印。ユニクロもモンベルも禁制品。旅行と外食？　孫の笑顔が絡まぬ限りは一切なし。

ただし例外がある。車、ゴルフ、海外旅行。これらは私にとって単なる消費ではなく「卒業試験」であり、5年の期限付きで延命を許す。

世の金持ち諸君よ、君たちは遠慮なく派手に浪費してほしい。高級レストランでワインを開け、ブランド品で身を飾り、世界のどこへでも飛んでいけ。経済の歯車を回すのは君たちの役目だ。私は逆にその影で一人、デフレ的隠遁生活を楽しむ。

どうせ景気はそのうち萎む。だったら早めに「貧乏シミュレーション」を始めておいた方が賢い。強烈なインフレの時代に、ひとりだけデフレを生きる。これぞ我が小さな逆張り戦略である。